自転車事故の損害賠償額はどのくらい?事例ごとの平均・最高額を解説

自転車事故をおこした場合、加害者は被害者に損害賠償が発生します。自転車事故の場合どのくらいの金額になるか気になる方もいるでしょう。自転車事故は自動車事故に比べて損害賠償額が低いと思われがちですが、実際は違います。

本記事では、自転車事故での賠償金額の平均金額、最高金額を解説します。

この記事を読むと、自転車保険での損害賠償金額や注意点がわかり、自転車事故に対して必要な準備を知ることができます。

自転車事故での損害賠償金額が決まる要素

自転車事故での損害賠償金額は、自動車事故と同様、過失割合や相手の年齢や職業などで決定されます。また、損害賠償の金額を決める費目があります。代表的なものは以下の7つです。

項目内容
治療費・入院費事故での通院や入院でかかった費用
通院交通費通院の際にかかった交通費(公共交通機関、タクシー代やガソリン代)
入通院慰謝料入通院が必要な傷害を負わされた時の精神的苦痛に対する慰謝料
後遺障害慰謝料事故による後遺障害を負わされた精神的苦痛に対する慰謝料
死亡慰謝料事故で被害者を失った遺族に対しての精神的苦痛に対する慰謝料
休業損害事故で働けなくなった時の収入に対する補償
逸失利益事故での後遺症、また死亡しなければ、本来得られていたはずの将来に対する収入の補償

自転車事故での損害賠償金額の平均金額

自転車事故での損害賠償金額は、過去の事例(※)から見ると約5000~9000万円程の高額な判例もございます。あくまで事例となるため、実際に事故が起きた場合の賠償額とは差があります。しかし、個人で負担するには高額となる可能性が高い点は変わりません。

以下は、交通事故によって被害者が死亡した場合と後遺症が残った場合の実際の事例です。

※(出展:一般社団法人日本損害保険協会「知っていますか?自転車の事故~安全な乗り方と事故への備え~(2023年8月改訂版)」)

事例1:被害者が死亡した場合

被害者が死亡してしまった場合の賠償額は次の通りです。

賠償額被害者事故内容裁判所
9,330万円25歳警察官頭蓋骨骨折等で死亡横浜地裁
6,779万円38歳女性脳挫傷で死亡東京地裁
5,438万円55歳女性頭蓋内損傷等で死亡東京地裁

(出展:一般社団法人日本損害保険協会「知っていますか?自転車の事故~安全な乗り方と事故への備え~(2023年8月改訂版)」)

自転車事故により加害者となってしまった場合、刑事上の責任と民事上の責任の2つが発生するほか、被害者遺族への謝罪や見舞いなどの道義的責任も発生します。自転車は法律上「軽車両」に分類される車両であるため、車と同じく相応の罰則や責任を負う可能性があることを覚えておかなければなりません。

事例2:被害者に後遺症が残った場合

亡くなるまでは至らないものの、被害者が重度の後遺障害を抱えることになってしまった場合も賠償金の請求が認められています。判例は以下の通りです。

賠償額被害者被害内容裁判所
9,521万円62歳女性植物状態神戸地裁
9,266万円24歳男性言語障害東京地裁

(出展:一般社団法人日本損害保険協会「知っていますか?自転車の事故~安全な乗り方と事故への備え~(2023年8月改訂版)」)

これらの事故の中には、未成年が起こしたものも含まれています。しかし、年齢によって責任が軽減されることはありません。賠償責任は自動車による事故とは異なり、成人だけが罰則の対象になるものではないことを理解しておきましょう。

自転車事故の損害賠償金の最高額に上限はない

自転車事故に限らず、損害賠償金額は過失割合や被害者の年齢・職業などによって異なります。また、相手が死亡した場合と後遺障害が残った場合とでは損害賠償金額が変わってくるなどの違いがあります。ただし、どちらの場合も上限はありません。

以下は、過去の交通事故で認められた損害賠償金額のうち、高額になった判例の一部です。

賠償額被害者判決日裁判所
5億2,853万円41歳男性(開業医)平成23年11月1日横浜地裁
3億6,750万円38歳男性(開業医)平成18年6月21日大阪地裁
4億3,961万円58歳女性(専門学校教諭)平成28年12月6日鹿児島地裁

(出展:損害保険料算出機構「2022年度・自動車保険の概況」)

場合によっては数億円もの賠償金を支払わなければならなくなる可能性があります。自動車よりも利用者数が多い自転車ですが、その分自転車を利用する全ての人が事故に対して最新の注意を払わなければなりません。

自転車事故で加害者が損害賠償を支払えない場合はどうする?

ここまでの内容で、自転車事故での損害賠償金額が高額になることを理解していただいたと思います。しかし、この高額の賠償金を加害者が支払えない場合はどうなるのでしょうか。

万が一加害者に賠償金の支払い能力がない場合、被害者が加入している自動車保険や傷害保険の補償を使用することが可能です。補償の範囲にもよりますが、被害者本人が加入していなくても家族が加入している保険で賄うことができるかもしれません。

一方で、自転車保険の義務化が進んでいるものの、罰則がないため無保険の方が多いのが現状です。自身が被害者になった際のためにも、加入している保険で賠償金を補うことができるのか確認をしましょう。

自転車事故での損害賠償の支払いの注意点

万が一、加害者になってしまった場合、被害者に対して損害賠償の支払いが発生します。軽傷の事故の場合でも10〜100万円のお金が必要です。また、事故の被害が大きいほど賠償金の額も高くなります。普段から自転車に乗っている方は、特に下記の支払いの注意点を理解しておきましょう。

  • 自賠責保険は使えない
  • 自動車保険は使えない
  • 加害者が未成年の場合、親に請求される可能性がある

それぞれ詳しく解説します。

自賠責保険は使えない

車を持っている方は必ず加入している自賠責保険ですが、自転車事故の場合使用することができません。

自賠責保険は、あくまでも自動車に対する保険です。自転車での事故は補償の対象外であり、万が一自転車事故を起こしても利用できない仕組みになっています。

ただし、自賠責保険は場合によって利用できる可能性があります。例えば、事故の相手が車やバイクである場合に利用可能です。それ以外の対人・対物の自転車事故については自賠責保険は適用されません。

自動車保険は使えない

自動車保険も、自動車やバイクに対する保険のため、自転車事故では使用できません。ただし、自分が加害者だった場合のみ、自転車事故でのケガの補償で使用することができるものもあります。

また、被害者に対する補償は、特約になっている「個人賠償責任保険」を付帯していれば損害賠償金を補うことが可能です。詳しくは契約している自動車保険の契約内容を確認してください。

加害者が未成年の場合、親に請求される可能性がある

加害者が未成年であり、法的な責任能力を負うことができない場合は、加害者の保護者に請求がいく可能性があります。法律上「何歳以上」から責任能力が負えると決まっていないため、万が一の事故に備えて、保護者が子供の自転車事故に備えておく必要があります。

自転車事故は、自転車に乗る全ての人が起こしうる事故です。年齢制限などはないものの、社会的に責任を負える立場にない人が加害者になった場合は、保護者や世話役の人物が賠償責任を負う可能性があることを理解しておいてください。

自転車事故は加害者になることも被害者になることもある

自転車事故は、自転車を利用している人は全て加害者・被害者のどちらにもなる可能性があります。安全運転をしていたつもりでも事故を起こしてしまう可能性はありますし、思わぬところで自分が被害者になってしまう可能性もあります。

どちらの状況になってもケガや精神的なダメージを負うことでしょう。100%事故を防ぐのは難しいものの、日頃から安全運転を心がけることで痛ましい事故の件数は少なくなります。加害者・被害者になる可能性があることを理解し、自転車の安全運転を心がけましょう。

自転車事故の高額な賠償に備えるために必ず自転車保険に入ろう

自転車事故は自動車事故と変わらず、損害賠償が高額になる可能性が大いにあります。平均して7000万円にもなる賠償金は、個人で負担するにはあまりにも大きな金額となることでしょう。未成年であれば、親や周囲の大人に大きな迷惑をかけてしまう可能性も否定できません。万が一事故を起こしてしまって、自転車保険に加入していなかったら、一生事故を背負っていく可能性もあります。

日頃から自転車を運転している方は、相手と自分を守るためにも自転車保険への加入をしましょう。月々保険料は発生するものの、万が一の時には強い味方になってくれます。

明日、加害者になった時のためにも、被害者の時でも守ってくれるのは自転車保険です。