「電動=安全」と思っていませんか?
子どもを送り迎えしたり、買い物で重たい荷物を運んだり。そんな毎日にとって、電動アシスト自転車はまさに“救世主”のような存在ですよね。
「坂道でもスイスイ登れるし、疲れない。しかもエコで便利。」そんなイメージをお持ちの方も多いと思います。
ですが、実はその“便利さ”の裏には、意外と知られていない事故のリスクも隠れています。とくに、子どもを乗せて走るママやパパ、運転に慣れていない方、高齢の利用者は注意が必要です。
警察庁や消費者庁などの公的機関からも、「電動自転車の急な加速や坂道での操作ミスによる事故が増えています」といった注意喚起が出ているほど。
今回は、「えっ、そんなことでも!?」というような電動自転車特有の事故例を取り上げつつ、すぐに実行できる簡単な対策や備えをわかりやすくご紹介していきます。
1.実は意外と知らない…電動アシスト自転車の「落とし穴」
電動アシスト自転車の事故が起きる背景には、「普通の自転車と同じ感覚で使ってしまうこと」が大きな原因のひとつとしてあります。便利でパワフルな分、その特性をしっかり理解していないと、「思っていた動きと違った…!」という危険な状況につながることも。
まずは、その“ちょっとした違い”がどこにあるのかを見ていきましょう。
1-1. 普通の自転車とは“ちょっと違う”
電動アシスト自転車は、ペダルを漕ぐ力に応じて、モーターが自動的にアシストしてくれます。漕ぎ出しや坂道など、負荷がかかる場面ほどグッと力を貸してくれるので、とっても快適ですよね。
でもこの「モーターの力」、使い方や状況によっては思った以上にパワフルすぎることがあるんです。たとえば、漕ぎ出した瞬間に思いがけず“ビュンッ”と前に進んでしまったり、坂道でスピードが出すぎて、止まりたい場所で止まれなかったり……。
「自分はちゃんと操作しているつもりなのに、なんだか車体に振り回されてる感じがする…」そんな“違和感”を感じたことがある方も、実は多いのではないでしょうか?
1-2. リスクが高い利用者とは?
特に注意が必要なのが、以下のような使い方をしている方です。
- お子さんをチャイルドシートに乗せている方 ⇒ 重心が高くなりやすく、バランスを崩しやすい
- 電動アシストに慣れていない初心者の方 ⇒ 発進時のアシストの強さに驚いてしまう
- 高齢の利用者や足腰に不安がある方 ⇒ スピードが出すぎたときの反応が遅れがち
こうした利用者にとって、電動自転車の“パワー”は味方であると同時に、扱い方を誤ると危険にもなるのです。
電動だからといって「普通の自転車より安全」というわけではありません。むしろ、正しい知識と使い方を知らずに乗ると、危険性が高まるケースもあるということを、まずは知っておいていただきたいのです。
2.事故ケース①発進時の“ビュンッ”で転倒する
事故のリスクが高い場面はさまざまありますが、中でも特に多いのが「漕ぎ出し」のタイミング。信号待ちのあとや、買い物帰りで荷物を積んでいるときなど、何気ない場面で突然バランスを崩してしまう——そんなケースが後を絶ちません。
いったい、なぜ発進時に転倒してしまうのでしょうか?その原因を見ていきましょう。
2-1. その瞬間、前に飛び出した…!
「ちょっとお買い物へ」と、子どもを後ろに乗せて自転車をこぎ出そうとしたときのこと。いつものようにペダルに体重をかけた瞬間、思いのほかグッと前に進んでしまい、焦ってハンドル操作を誤り、転倒。
実はこうした“漕ぎ出し時の転倒”は、電動アシスト自転車の事故のなかでも非常に多いケースなんです。
特に、次のような条件が重なると、事故のリスクはぐんと高まります:
- 坂道での発進
- お子さんを乗せているとき
- 前後に荷物を積んでいるとき
- アシストモードが「強」になっているとき
つまり「ただでさえ不安定な状況」で、「パワーのあるアシスト」が急に加わることで、バランスを崩してしまうんですね。
2-2. なぜ発進時にそんなに急加速するの?
原因は、ペダルにかかる“力の強さ”にあります。
電動アシスト自転車のモーターは、「今、どれくらい力をかけて漕いでいるか?」をセンサーで感知し、それに合わせてアシストを加える仕組みです。
ところが、信号待ちや坂道などでグッと体重をかけて一気に踏み込むと、「おっ、今すごく力を入れてるね!」とモーターが判断し、一気にパワー全開でアシストしてしまうのです。
とくに坂道や荷物の重みが加わると、センサーはより“負荷が高い”と認識するため、アシストの力が強くなります。その結果、自分の想定よりずっと強い力で前に進んでしまうというわけです。
そして、電動自転車は普通の自転車よりも車体が重く、さらに子どもを乗せていると重心も高くなるため、バランスを崩すと支えきれずに転倒してしまうリスクが高くなります。
「うちの子が乗っていたから、慌てて倒れた自転車を支えようとしたけど…全然支えきれなかった」という声も少なくありません。
2-3. 事故を防ぐためにできること
では、こうした“急発進による転倒”を防ぐには、どうすればいいのでしょうか?ポイントは3つです。
①「発進時は、アシストを弱めに」
坂道や荷物があるときほど、強いアシストを使いたくなりますが、発進直後だけは“エコモード”や“弱モード”に切り替えておくのがおすすめです。最近の機種ではボタン一つでモードを変更できるので、習慣づけておくと安心です。
②「ペダルは“そっと”回す」
ペダルをガツンと踏み込むのではなく、スッと軽く回し始めてから徐々に力を入れていくイメージで漕ぎ出すと、モーターも穏やかにアシストしてくれます。最初の1〜2秒間を“慎重に、ゆっくり”がコツです。
③「いきなり子どもを乗せず、まずは練習を」
はじめて電動アシスト自転車に乗る方や、新しい車種に変えたばかりの方は、子どもを乗せずに、まずは“漕ぎ出し→止まる”の練習を何度か行うとよいでしょう。特に平坦な道で練習しておくと、アシストのクセがつかみやすくなります。
また、後部にチャイルドシートを付けている方は、支え方の練習も大切です。「倒れそうになったとき、どう体を使えば支えられるか」をシミュレーションしておくだけでも、とっさのときの動きに差が出ます。
「慣れれば平気だと思ってたけど、子どもを乗せた状態で初めて乗ったときは正直ちょっと怖かったです…」というママの声は、本当に多いもの。
でも逆に言えば、“ちょっとした工夫”と“意識づけ”があれば、こうした事故は防げるということでもあります。
3.事故ケース②坂道でのスピード制御ミス
発進時の“ビュンッ”と並んで、事故が起きやすいのが「坂道」での走行です。特に、子どもを乗せた状態や荷物をたくさん積んでいるときは、スピードのコントロールが難しくなることも。
実は電動アシスト自転車ならではの特徴が、下り坂のトラブルを引き起こしやすくしているのです。次は、そんな“坂道での制御ミス”にまつわるケースを見ていきましょう。
3-1. ブレーキをかけてるのに、止まらない!?
たとえば、保育園の送りのあと、坂を下って駅へ向かう途中。子どもを乗せたまま長い下り坂を走っていたら、思ったよりスピードが出て、「えっ…止まらない!?」と焦った経験、ありませんか?
実際、坂道でのスピードコントロールがうまくいかず、転倒したり、前の人や車にぶつかってしまったりする事故は少なくありません。中には、「ブレーキを握っていたのに間に合わなかった」という声も多く聞かれます。
一見、電動アシストとは関係がなさそうに見える「下り坂」。でも、電動アシストならではの“車体の重さ”や“慣性”が、事故につながりやすい要因になっているんです。
3-2. 坂道ではどうして危険なの?
まず、電動アシスト自転車は一般の自転車よりもかなり重いという特徴があります。バッテリーやモーターが搭載されているため、車体だけで25〜30kg以上あることも。
ここにお子さんの体重(15〜20kg)、さらに買い物袋などの荷物が加わると、合計で50kg以上の重さになるケースも。その重さのまま下り坂を走れば、勢いがつきすぎてブレーキでは止まりきれない状況になりやすいのは、想像に難くありません。
さらに、下り坂でブレーキを長く握りっぱなしにしていると、「フェード現象」と呼ばれるトラブルが起こることがあります。
これは、ブレーキが過熱し、効きが弱まってしまう現象で、自動車でもよく知られていますが、近年では電動アシスト自転車でも、同様のケースが報告されています。
つまり、
- 車体が重いためスピードが出やすい
- 加速を抑えようとブレーキをかけ続ける
- 結果としてブレーキが過熱し、効かなくなる
という負のスパイラルに陥ってしまうのです。
また、上り坂の発進時も、実は油断できません。少しでもペダルを踏み込むと、「坂道だ=アシストが必要」とモーターが判断し、想像以上の力で前に進んでしまうケースが多いからです。
特に、坂道の途中で信号待ちをしていたような場合、「発進直後に車体が傾いてバランスを崩し、横転した」という報告もあります。
3-3. 坂道での事故を防ぐには?
では、こうした坂道でのトラブルを防ぐには、どうしたらいいのでしょうか?
① 坂道では、あらかじめアシストを抑えておく
上り坂の発進時などは、モーターがグッと力を出しすぎて、思わぬスピードになることも。そのため、坂に入る前には「アシストモードを弱める」準備をしておくことが大切です。モードの切り替えに慣れておくと、思った通りの加速になりやすく、バランスも崩しにくくなります。
② 下り坂ではブレーキを“ちょこちょこ”かける
坂道を下るときには、ブレーキをずっと握り続けるのではなく、断続的に使うのが基本です。
前ブレーキと後ブレーキを交互に使ったり、短くこまめにかけたりすることで、ブレーキの加熱を防ぎつつ、安定して減速することができます。
また、前輪ブレーキを急に強くかけすぎると、前のめりになって転倒する原因になるので、「後ろブレーキ多め+前は軽く」が基本です。
③ 荷物の積み方にも工夫を
意外と見落としがちなのが「荷物の重心」です。
前カゴに重たい荷物をたくさん積むと、重心が前方に寄ってバランスが崩れやすくなります。できれば重い荷物は「後ろカゴ」や「カゴ下の収納スペース」に入れるなど、重心を低く・後ろ寄りに保つのがおすすめです。
また、荷物がぐらつかないように、ゴムバンドなどでしっかり固定しておくことも大切です。
坂道は、景色も気持ちも開放的になりやすい場所ですが、油断は禁物。「ちょっとした意識」で、事故をぐっと防ぎやすくなることが分かってきましたね。
4.電動自転車ならではの事故後リスク
発進や坂道での操作ミスは、ヒヤッとするだけで終わることもあります。でも、もし実際に転倒したり、他の人やモノにぶつかってしまったら?電動アシスト自転車ならではの“事故のあと”には、思った以上に大きな負担や責任がついて回ることもあるのです。
4-1. ぶつけた!転んだ!それだけじゃ終わらない…
電動アシスト自転車の事故というと、「転倒してケガをする」「車道でヒヤッとする」といったシーンを思い浮かべる方が多いと思います。でも実は、事故の“その後”にも気をつけなければいけない、大きなリスクがあるんです。
- 子どもを乗せていたときにふらついて転倒。車体が隣の駐車中の車にぶつかってしまった
- 坂道で止まりきれず、歩行者に接触してしまった
- 雨の日にスリップして、自転車ごと転倒。ハンドルやバッテリーが破損してしまった
こうしたケースでは、ケガだけでなく「モノの修理」や「人への賠償」が必要になることもあるのです。
4-2. 電動アシストは“壊れたら高い”!
まず知っておきたいのは、電動アシスト自転車は修理費用が高額になりやすいということ。
車体価格も一般の自転車に比べて倍以上(最近は10万円台〜20万円台が主流)ですが、事故で壊れた場合の修理費用も、当然ながら高くつきます。
バッテリー周辺やモーターが損傷した場合は、数万円〜10万円以上かかることも珍しくありません。特に、お子さんを乗せる「3人乗り対応モデル」は車体も重くパーツも多いため、部品代+工賃で高額になりがちです。
また、転倒の勢いで「フレームが歪んだ」「前カゴごと前輪が曲がった」など、全体のバランスが崩れてしまうと、修理では対応できず、買い替えが必要になるケースも…。
つまり、自転車自体が壊れたときのダメージは、金銭的にも精神的にもかなりの負担になるということです。
4-3. もっと怖いのは「加害者」になること
電動自転車の事故でもう一つ注意しなければならないのが、「相手をケガさせてしまうリスク」です。たとえば…
- 幼稚園の送りで急いでいて、横断歩道で歩行者にぶつかってしまった
- 坂道で制御できず、他の自転車や車に接触してしまった
- 住宅街で飛び出してきた子どもと衝突してしまった
こうした事故で自分が加害者となってしまった場合、被害者の治療費・慰謝料・休業補償などを負担しなければならないことがあります。
そしてこの賠償金、実は数百万円〜数千万円になるケースもあるのです。
- 小学生が坂道を下って歩行者と衝突 → 約9500万円の賠償命令
- 大人がスマホ操作中に自転車で人にぶつかる → 約5000万円の損害賠償命令
これはあくまで一例ですが、電動アシスト自転車のスピードや重量を考えると、大きな事故につながる可能性があることは決して他人事ではありません。
4-4. 万が一に備える「自転車保険」という選択肢
こうした“もしも”に備えるために、いま注目されているのが「自転車保険」です。
自転車保険といってもさまざまな種類がありますが、基本的には次の2つがセットになっていることが多いです。
- 個人賠償責任保険:他人をケガさせたり物を壊したときの賠償を補償
- 傷害保険:自分や家族がケガをしたときの入院・通院・手術費用などを補償
中でも、個人賠償責任保険は数千万円〜1億円以上までカバーできるものが主流で、最近では月数百円〜1000円程度のプランも増えてきています。
また、家族全員を補償対象にできるプランもあるため、子どもや高齢の親が自転車を使う家庭には特におすすめです。
「子どもも使うし、通勤にも使ってるし…」というご家庭ほど、保険の加入を“当たり前”にしておくべき時代かもしれません。

便利で快適な電動アシスト自転車ですが、事故が起きた後には想像以上の出費や責任がのしかかる可能性があります。
そんなときに「備えておいてよかった」と思えるように、今のうちから保険や安全対策を見直してみることが大切です。
5.まとめ│安全に乗るために大切なこと
電動アシスト自転車は、日々の暮らしを本当に便利にしてくれる存在です。子どもを保育園に送ったあとにそのままスーパーへ行ったり、駅までの移動がラクになったり、坂道でも汗をかかずに進めたり。特に、小さな子どもがいるママにとっては「もう手放せない!」という方も多いですよね。
だからこそ、その便利さの裏側にある「ちょっとした落とし穴」には、しっかりと目を向けておく必要があります。
今回の記事で取り上げたように、
- 発進時の強いアシストによる転倒
- 坂道でのスピード制御ミス
- 事故後の高額修理や賠償責任
といったリスクは、決して特別なケースではなく、誰にでも起こりうることです。
特に、初めて電動アシストに乗る方や、子どもを同乗させて使う方にとっては、「普通の自転車の感覚で動かそうとしたら思わぬ挙動になった…」というのはよくある話。
操作に“慣れる前”の意識が大切
事故の多くは、「慣れるまでの期間」に集中しています。漕ぎ出しの感覚や、ブレーキの効き具合、荷物や子どもの重みでバランスが崩れる感じ…。こうした特性を理解するまでの間は、特に慎重に乗ることが大切です。
- 最初の1週間は短距離の練習を重ねる
- 平坦な道での乗り心地をつかむ
- アシストモードをこまめに切り替えてみる
といった行動が、事故を防ぐ大きなポイントになります。
「万が一」への備えも忘れずに
もちろん、安全に乗る努力をしていても、完全にリスクをゼロにはできません。だからこそ、自転車保険などの備えを“当たり前の習慣”にしておくことも大切です。
「もしものとき、ちゃんと守られている」そう思えるだけで、日々の運転にも心の余裕が生まれます。
家族で1つのプランに入っておけば、子どもや高齢の親が自転車を使うときにも安心できますし、最近はロードサービスがセットになっているプランもあるので、出先のトラブルにも対応しやすくなっています。
「便利さ × 安全意識 × 万が一の備え」
この3つがそろって、ようやく「本当に安心できる電動アシスト自転車ライフ」が始まります。
毎日の足として、長く付き合っていくために、少しだけ乗り方と備えを見直してみませんか?