最近の車はなぜ修理費が高い?昔との比較やバンパーをぶつけただけでも高額になる理由

「昔はちょっとぶつけたくらいなら、そこまで修理代はかからなかったのに……」

実際、車の修理費は上昇傾向にあります。その背景には、部品や塗料などの価格上昇だけでなく、最近の車にカメラやセンサーといった高度な装備が増えていることも関係しています。

そのため、一見するとバンパーの小さな傷に見えても、部品の交換やセンサーの調整などが必要になり、思っていた以上に修理費がかかるケースもあります。

この記事では、車の修理費が昔と比べてどのくらい上がっているのかを実際のデータから確認しながら、最近の車で修理費が高くなりやすい理由や、バンパー・フロントガラスなどの修理事情についてわかりやすく解説します。

目次 Outline

1.車の修理費は昔より高くなっている?

「最近の車は修理代が高い」といわれますが、実際のデータを見ても、自動車の修理費は長期的に上昇しています。

特に注目したいのが、事故で相手の車などを壊した際に使われる「対物賠償責任保険」の修理費です。

1-1.対物事故の1件あたり修理費はどれくらい上がった?

損害保険料率算出機構の資料によると、対物賠償責任保険における支払い1件あたりの修理費は、2018年度の26.70万円から2022年度には30.04万円まで上昇しています。

わずか4年間で約3.3万円、割合にすると約12.5%の上昇です。

ここでいう金額は、「一般的な車を修理すると平均30万円かかる」という意味ではありません。あくまで、対物賠償責任保険で支払いの対象となった事故について、1件あたりの修理費を集計したものです。

それでも、事故による修理費が上昇していることを示す一つの目安になります。

1-2.2010年代と現在を比較してみよう

さらに過去までさかのぼると、修理費が徐々に高くなってきたことが分かります。

損害保険料率算出機構の資料をもとに比較すると、対物賠償責任保険の支払い1件あたり修理費は、次のように推移しています。

年度支払い1件あたりの修理費
2010年度約21.3万円
2014年度約24.7万円
2018年度約26.7万円
2022年度約30.0万円

2010年度の約21.3万円と2022年度の約30.0万円を比較すると、12年間で約8.7万円、約41%上昇した計算になります。

もちろん、事故の内容や修理する車種などは一件ごとに異なるため、単純に「同じ修理が12年間で41%値上がりした」という意味ではありません。

ただ、2014年の時点ですでに損害保険料率算出機構は、自動車保険の参考純率改定の背景として「平均修理費が上昇したこと」を挙げていました。修理費の高額化は、ここ数年だけに突然始まったものではないことが分かります。

1-3.物価高だけが修理費上昇の原因ではない

最近はさまざまな商品やサービスが値上がりしているため、「車の修理費が高くなったのも物価高のせい」と考える方もいるでしょう。

もちろん、物価上昇も大きな要因です。損害保険料率算出機構も2024年の資料で、急激な物価上昇が部品や塗料などの価格に影響し、修理費が上昇していることを挙げています。

しかし、それだけではありません。

現在の車には、自動ブレーキをはじめとする運転支援機能が普及し、カメラやセンサーなどさまざまな電子機器が搭載されています。その結果、部品そのものが高価になったり、修理後に専門的な調整作業が必要になったりするケースが増えています。損害保険料率算出機構も、物価上昇と並んで「車両の高性能化による修理費の高額化」を挙げています。

つまり、最近の車の修理費が高くなっている背景には、「物価の上昇」と「車そのものの高性能化」という2つの大きな変化が重なっているのです。

では、具体的にどのような部分が修理費を押し上げているのでしょうか。次から詳しく見ていきましょう。

2.最近の車はなぜ修理費が高い?

車の修理費が上がっている背景には、物価上昇だけでなく、車そのものの変化があります。

以前と比べて安全性能や快適性が向上した一方、使用される部品や修理方法も複雑になっています。その結果、同じような事故でも修理にかかる費用が高くなりやすいのです。

2-1.部品や塗料などの価格が上がっている

まず影響しているのが、修理に使用する部品や塗料などの価格上昇です。

事故で車を修理する場合、交換する部品だけでなく、塗装に使う材料やさまざまな資材が必要になります。こうした価格が上がれば、当然ながら修理費にも影響します。

損害保険料率算出機構も、自動車の修理費が上昇している背景として、急激な物価上昇が部品や塗料などの価格に及んでいることを挙げています。

つまり、同じような場所をぶつけたとしても、以前より部品や材料そのものが高くなっているため、修理費も高くなりやすいということです。

2-2.センサーやカメラなど高価な部品が増えた

もう一つ大きく変わったのが、車に搭載される電子機器の多さです。

最近の車には、衝突被害軽減ブレーキ(いわゆる自動ブレーキ)や車線逸脱を警告する機能など、運転を支援するさまざまな機能が搭載されています。

こうした機能では、車の周囲の状況を把握するためにカメラやレーダーなどが利用されています。

そして重要なのが、これらの装置は必ずしも車内の目立たない場所だけにあるわけではないということです。フロントガラス周辺をはじめ、バンパーやフロントグリルなど、事故で損傷しやすい場所と関係しているケースがあります。

そのため、「外装が少しへこんだだけ」に見える事故でも、関連するセンサーなどに影響がないか確認しなければならないことがあります。

車が高性能になったことで事故を防止・軽減する機能は充実しましたが、その一方で、事故後の修理は以前より複雑になっているのです。

2-3.修理作業そのものも複雑になっている

最近の車では、壊れた部品を交換しただけでは修理が完了しないこともあります。

カメラやレーダーなどが関係する部分を修理・交換した場合、装置が正しい位置や角度で周囲を認識できるよう、修理後に調整が必要になるケースがあるためです。

代表的なのが、後ほど詳しく紹介する「エーミング」と呼ばれる調整作業です。

例えば、見た目としてはバンパーを交換しただけでも、その作業によって運転支援機能に関係する装置の調整が必要になれば、その分だけ作業工程も増えます。

つまり現在の車は、「部品が高くなった」だけでなく、「車が高性能になり、修理に必要な作業も増えた」という両面から、修理費が高くなりやすくなっています。

そして、この変化を特に実感しやすいのが「バンパー」の修理です。「ちょっとこすっただけなのに、どうしてこんなに高いの?」となる理由を、次に詳しく見ていきましょう。

3.バンパーをぶつけただけでも高額になるのはなぜ?

「駐車するときにバンパーを少しぶつけてしまった」「見た目は擦り傷程度だから、それほど修理代はかからないだろう」

以前なら、このように考えることも多かったかもしれません。しかし最近の車では、バンパー周辺にさまざまな装置が関係しているため、見た目の損傷以上に修理が複雑になるケースがあります。

3-1.最近のバンパー周辺にはセンサーなどが搭載されている

最近の車には、衝突被害軽減ブレーキや駐車支援などに利用するセンサー、レーダーなどが搭載されています。

車種によって搭載位置や方式は異なりますが、こうした装置の一部はフロントバンパーやフロントグリルなどの周辺に設置されています。そのため、バンパーをぶつけた場合、単純に傷やへこみだけを確認すればよいとは限りません。

国土交通省も、カメラやレーダーなどを使用する先進運転支援システムについて、事故や整備などによって取り付け位置にずれが生じると、正しく作動しなくなるおそれがあると注意を促しています。

つまり最近の車では、バンパーが単なる「外側のカバー」とはいえないケースが増えているのです。

3-2.見た目は小さな傷でも内部に影響していることがある

バンパーの表面に大きな損傷がなくても、それだけで「修理は簡単」と判断することはできません。

衝撃の加わり方によっては、バンパーの内側にある部品や取り付け部分などに影響が出ている可能性があります。また、運転支援機能に関係するセンサーなどが搭載されている車では、それらが正常に機能しているか確認が必要になることもあります。

反対に、傷があるからといって必ずセンサーまで壊れているわけでもありません。

大切なのは、見た目だけでは実際に必要な修理内容や費用を判断しにくくなっているという点です。

「少し擦っただけだから数万円程度だろう」と思って修理を依頼したところ、点検や部品交換などが加わり、想定より見積もりが高くなることも考えられます。

3-3.部品の交換だけでは修理が終わらない場合も

そして、最近の車ならではの修理費を考えるうえで重要なのが、「交換したら終わり」とは限らないことです。

例えば、カメラやレーダーなどに関係するバンパーやグリルを取り外したり交換したりすると、その後、装置が正しく機能するよう調整が必要になる場合があります。

国土交通省では、こうした電子制御装置に関係する整備を「電子制御装置整備」として位置づけています。対象となる作業には、自動運行装置の整備だけでなく、衝突被害軽減ブレーキなどに用いられるカメラやレーダー等の取り外しや機能調整、さらにそれらに影響するバンパーやグリル等の脱着なども含まれます。

そのため現在では、傷やへこみを修理する→ 必要な部品を交換する→ センサーなどを点検する→ 必要に応じて調整すると、従来より工程が増えるケースがあります。

この「調整」に関係するのが、最近の車の修理で耳にすることが増えた「エーミング」です。

4.最近の車で必要になる「エーミング」とは?

最近の車の修理費が高くなる理由として、知っておきたいのが「エーミング」という作業です。

あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、カメラやセンサーを使った運転支援機能が普及したことで、車の修理において重要な作業の一つになっています。

4-1.カメラやセンサーを正しく作動させるための調整

エーミングとは、車に搭載されているカメラやレーダーなどが、正しい位置や角度で周囲の状況を認識できるように調整・校正する作業のことです。

例えば、衝突被害軽減ブレーキでは、カメラやレーダーなどを使って前方の車両や障害物を検知しています。こうした装置の取り付け位置や角度がずれてしまうと、本来の性能を十分に発揮できなくなるおそれがあります。

そのため、車種や作業内容に応じて、専用の機器などを使って装置の状態を確認し、必要な調整を行います。見た目の修理が終わっていても、安全装置が正しく機能する状態になっているとは限らないということです。

4-2.バンパーなどの修理後に必要になることがある

エーミングは、事故でカメラやセンサーが直接壊れた場合だけに必要になるものではありません。

例えば、バンパーやフロントグリルなどを取り外したり交換したりした際にも、車種や装置の構造によっては調整が必要になります。

国土交通省は、衝突被害軽減ブレーキなどに用いられるカメラやレーダー等の取り外し・機能調整に加え、これらの作動に影響するバンパーやグリルなどの脱着を、電子制御装置整備の対象としています。

ただし、バンパーを修理したら必ずエーミングが必要になるわけではありません。必要かどうかは車種や搭載装置、修理内容などによって異なるため、メーカーが定める整備手順などに基づいて判断されます。

4-3.専用の設備や作業が必要になる

エーミングには、専用の診断機や調整用のターゲットなどを使用する方法があります。

作業によっては、車両を指定された条件で設置したり、カメラやレーダーの認識状態を確認したりする必要があります。また、車種によっては、一定の条件で実際に走行しながら調整する方法が採用されていることもあります。

こうした作業には、対応する設備や知識、技術が求められます。

つまり、以前であれば外装部品の修理や交換だけで済んでいたようなケースでも、最近の車では電子制御装置の点検や調整が加わり、その分の費用が発生する場合があるのです。

もちろん、エーミングは単に修理費を高くするための作業ではありません。修理後も運転支援機能を適切に作動させるために必要な、安全に関わる作業です。

そして、このエーミングが関係するのはバンパーだけではありません。実は、飛び石などで傷ついたフロントガラスを交換する際にも、車種によっては同様の調整が必要になることがあります。

5.フロントガラスの交換も昔より複雑になっている

車のフロントガラスといえば、飛び石によるひび割れや傷などで交換が必要になることがあります。

以前は「傷んだガラスを新しいものに交換する」というイメージが強かったかもしれません。しかし最近の車では、フロントガラス周辺にもさまざまな機能が搭載されており、交換作業が複雑になるケースがあります。

5-1.フロントガラス周辺にもカメラなどが搭載されている

最近の車では、フロントガラスの上部、ルームミラー付近などに運転支援用のカメラが取り付けられていることがあります。

こうしたカメラは、前方の車両や歩行者、道路の白線などを認識し、衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱警報などの機能に利用されています。

つまり、フロントガラスは単に雨風を防いで前方を見るためのものではなく、車の安全装置と密接に関係する部品にもなっているのです。

そのため、フロントガラスを交換する際には、ガラスそのものだけでなく、カメラの取り付け状態や運転支援機能への影響にも注意する必要があります。

5-2.ガラス交換後にエーミングが必要になる場合も

フロントガラスを交換した際、車種によっては先ほど紹介した「エーミング」が必要になります。

例えば、フロントガラスに取り付けられたカメラは、わずかな位置や角度の違いによって、前方の認識に影響が出る可能性があります。そのため、ガラスを交換した後に、カメラが正しく認識できる状態になっているか確認し、必要に応じて調整・校正する作業が行われます。

ボッシュなどの自動車整備機器メーカーも、先進運転支援システム(ADAS)のカメラやレーダーについて、修理・交換後の適切な校正の重要性を案内しています。

ただし、すべての車でフロントガラス交換後にエーミングが必要になるわけではありません。必要な作業は車種や搭載されている装置、メーカーの整備手順などによって異なります。

ガラスの交換費用に加えて、カメラの調整費用が発生する場合があることも、最近の車の修理費が高くなりやすい理由の一つです。

5-3.ガラスそのものも高機能化している

さらに、フロントガラス自体の高機能化も進んでいます。

最近では、紫外線をカットする機能や断熱性能、遮音性能などを備えたガラスが採用されている車もあります。こうした機能が充実する一方で、交換するガラスそのものの価格も高くなる場合があります。

実際、損害保険料率算出機構が2024年に公表した資料では、フロントウインドシールドガラスの平均部品費が次のように示されています。

年度平均部品費
2021年度102,615円
2023年度109,945円

わずか2年間で7,330円、約7.1%上昇しています。

出典:giroj.or.jp

なお、この数字は調査対象となったフロントガラスの平均部品費であり、交換作業にかかる工賃やエーミング費用などを含めた総額ではありません。

実際の交換費用は、車種やガラスの種類、必要な作業によって異なります。

このように最近の車では、「ガラスそのものの価格上昇」と「交換後に必要となる追加作業」の両方が、修理費に影響する可能性があります。

飛び石による小さなひび割れでも、交換が必要になれば思わぬ出費につながることがあるため、以前の感覚だけで修理費を判断しないことが大切です。

6.修理費が高くなる時代だからこそ事故への備えも確認しよう

ここまで見てきたように、最近の車は部品価格の上昇や安全装置の高性能化によって、以前より修理費が高くなるケースがあります。

そして、これは自分の車を修理するときだけの問題ではありません。事故で相手の車を傷つけてしまった場合にも、修理費の高額化が関係してきます。

6-1.小さな事故でも思わぬ修理費になることがある

例えば、駐車場で壁にバンパーをぶつけてしまった場合、見た目には小さな傷しか残らないこともあります。

しかし、車種や損傷の程度によっては、バンパーの交換や内部部品の点検、センサーの調整などが必要になる可能性があります。

もちろん、すべての小さな傷が高額修理につながるわけではありません。表面の補修だけで済むケースもあります。ただ、「見た目が軽い傷だから修理費も安いはず」とは限らないのが最近の車の特徴です。

実際にどのような修理が必要なのかは、整備工場などで確認してもらうことが大切です。

6-2.相手の車の修理費が高額になる可能性も

注意したいのは、自分が事故の被害者になる場合だけではありません。

例えば、駐車場でバックしているときに、停車中の車へ接触してしまったとします。

相手の車がセンサーやカメラなどを搭載した車種だった場合、損傷した場所によっては、外装の修理に加えて電子制御装置の点検や調整が必要になることもあります。

また、高額なヘッドライトやフロントガラスなどを損傷させれば、修理費がさらに大きくなる可能性もあります。

冒頭で紹介した損害保険料率算出機構のデータでも、対物賠償責任保険の支払い1件あたり修理費は、2018年度の26.70万円から2022年度には30.04万円へ上昇していました。

こうした数字からも、事故による修理費の高額化は、自分だけでなく相手の車についても考えておきたい問題だと分かります。

6-3.自動車保険の補償内容を確認しておこう

例えば、事故で自分の車が壊れた場合は、契約している車両保険の内容によって修理費が補償されることがあります。

一方、事故で相手の車などを壊し、法律上の損害賠償責任を負った場合には、対物賠償責任保険が関係します。

ただし、車両保険に加入していなければ、自分の車の修理費が補償されないケースもあります。また、車両保険に加入していても、事故の内容や免責金額などによって自己負担が発生する場合があります。

さらに、保険を使うことで翌年以降の等級や保険料に影響することもあるため、修理費が発生したら必ず保険を使ったほうがよいとは限りません。修理費の金額だけでなく、補償内容や自己負担額、保険を使った場合の影響なども踏まえて判断することが大切です。

最近は、以前なら比較的少ない費用で済んでいたような修理でも、思わぬ出費につながることがあります。

だからこそ、万が一の事故に備えて、自分の自動車保険がどこまで補償してくれるのか、一度確認しておくとよいでしょう。

まとめ|「少しぶつけただけだから安く済む」とは限らない

最近の車の修理費が高くなっている背景には、部品や塗料などの価格上昇に加えて、車そのものの高性能化があります。

実際、損害保険料率算出機構のデータでは、対物賠償責任保険の支払い1件あたり修理費が、2010年度の約21.3万円から2022年度には約30.0万円へと上昇しています。

特に最近の車は、自動ブレーキなどに使われるカメラやセンサーが搭載されており、バンパーやフロントガラスを修理・交換する際にも、エーミングなどの調整作業が必要になる場合があります。

そのため、見た目には小さな傷でも、以前の感覚で「修理代はそれほどかからないだろう」と判断するのは難しくなっています。

もちろん、すべての修理が高額になるわけではありません。修理費は車種や損傷の程度、必要な作業によって異なります。ただし、こうした修理費の高額化は、自分の車だけでなく、事故で相手の車を傷つけてしまった場合にも関係する問題です。

万が一の事故で思わぬ出費に慌てないためにも、日頃から安全運転を心がけるとともに、自動車保険の車両保険や対物賠償責任保険などの補償内容を確認しておくことが大切です。

車の修理費や自動車保険について気になること、不安なことがありましたら、お気軽にご相談ください。

この記事を書いた人 Wrote this article

山下理輝

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