車と自転車の事故の過失割合は?【後編】

前回に引き続き、四輪車と自転車の事故における過失割合について解説していきます。

前編では、基本的な過失割合や、事故の種類ごとに異なるポイントについて解説しました。

四輪車と自転車の事故においては、どちらの責任が重くなるかが重要な問題です。しかし、具体的な状況や道路の環境、事故発生時のスピードなどにより過失の割合は大きく変動することがあります。

今回は、前編で触れた一般的な過失割合に加え、特殊なケース等にも触れていきます。

四輪車と自転車が共存する現代社会において、安全意識の向上がますます求められている中、より適切な判断を行うための知識をこの後編で深めていきましょう。

交差点での直進車同士の事故の過失割合

四輪車が一方通行を逆走している場合

信号のない交差点で、直進してきた自転車と四輪車が衝突した事故のケースです。特に、四輪車が一方通行を逆走していた場合の過失割合について見ていきます。

通常、同じ道幅の交差点で直進してきた自転車と四輪車が接触した場合、自転車側の過失割合は20%、四輪車側は80%とされます。しかし、今回のように四輪車が一方通行を逆走していた場合、四輪車の責任がさらに重くなります。

このため、この事故では自転車の過失割合は10%、四輪車は90%が基本過失割合として設定されます。

自転車が一方通行を逆走している場合

信号機のない交差点で直進して進入した自転車と四輪車が衝突した事故についての過失割合のケースです。この場合、自転車が一方通行を逆走していた場合の過失割合を見ていきます。

通常、同じ道幅の交差点で直進する自転車と四輪車が接触した場合、基本の過失割合は自転車20%、四輪車80%とされています。しかし、このケースでは、自転車が一方通行の規則に反して逆走していたため、危険度が増すと判断され、自転車側の過失が大きく加算されます。その結果、過失割合は自転車Aが50%、四輪車Bが50%となります。

一方通行違反をしている自転車は予測が難しく、四輪車側も注意が必要ですが、自転車側の過失がより重いと見なされるため、このような過失割合が適用されます。

同程度の道幅の交差点における「ながらスマホ」の自転車と四輪車の事故

信号のない、見通しの悪い同程度の道幅の交差点で発生した、直進してきた「ながらスマホ」をしていた自転車(A)と四輪車(B)との事故についてです。

通常、信号機がなく、左側通行で直進してきた自転車とその右側から進入した四輪車が衝突した場合、一般的な過失割合は自転車20%、四輪車80%となります。しかし今回のケースでは、自転車がスマホを操作しながら運転していたことが「著しい過失」と見なされた場合、過失がさらに10%加算され、自転車側の過失が30%となります。

スマホ操作をしながらの運転は道路交通法や公安委員会の規制に抵触する可能性があり、違反と判断されれば5万円以下の罰金が科せられることもあります。このような行為は安全運転義務違反に該当し、運転者にとって重大な責任が伴う点も押さえておく必要があります。

自転車の進路変更に伴う事故

前方を走る自転車が障害物を避けるために進路変更した際の接触事故

あらかじめ前方を走行していた自転車Aが、進路上の障害物を避けるために進路変更した際、後方から直進してきた四輪車Bと接触した場合の過失割合について説明します。

このようなケースでは、基本的な過失割合として自転車Aが10%、四輪車Bが90%とされています。前方に障害物がある場合、先行車である自転車が進路変更を行う可能性は、後続の四輪車のドライバーも予測できるため、後続車側には十分な注意が求められます。

ただし、自転車が進路変更を行う際には、後方に対して適切な合図を送ることも必要です。

その他の特殊なケースの事故

傘差し運転の自転車とクルマの事故

雨の日に傘を差しながら自転車に乗る方をよく見かけますが、この行為は道路交通法上、問題になることをご存じでしょうか?自転車は軽車両に分類され、片手運転や視界の妨げとなる傘差し運転は、安定性が低下し事故のリスクが増えるため、法律や規制により禁止されている場合があります。違反すると、罰則が適用されることもあります。(*1)

さらに、傘を差しながらの運転中に事故が起きた場合、相手が車であっても、自転車側の過失が大きくなる可能性があります。ここでは、傘差し運転の自転車と車の事故における過失割合を具体例と共に解説します。

【事例】信号機のない交差点での事故

雨の日、同じ道幅の交差点で傘差し運転中の自転車が右折し、直進する車と衝突した場合を考えます。

過失割合
A(傘差し運転の自転車):B(車)=35:65

解説
通常、同条件での事故では過失割合は自転車30%、車70%ですが、自転車が傘を差して片手運転をしていたため、過失が5%加算されます。

【事例】横断歩道の赤信号での事故

雨の日、赤信号の横断歩道を傘差し運転の自転車が渡り、黄色信号で直進する車と接触した場合です。

過失割合
A(傘差し運転の自転車):B(車)=60:40

通常この状況での過失割合は自転車55%、車45%ですが、自転車が片手運転をしていたため5%が加算されます。

傘差し運転は道路交通法で禁止されているだけでなく、事故の過失割合にも影響を及ぼす可能性があります。2015年6月に施行された道路交通法の改正により、危険行為の繰り返しがある場合は自転車運転者講習が義務づけられています。傘差し運転は安全運転義務違反と見なされる場合もあるため、雨の日にはレインコートを準備するなど、安全を意識して行動することが大切です。便利な自転車も適切に扱わないと危険になることを十分理解して、安全に利用しましょう。

(*1)各都道府県によって異なる場合もありますが、多くの地域で自転車の傘差し運転は禁止されています。警察のウェブサイト等でも情報を確認することができます。

夜間、無灯火で飛び出してきた自転車との事故

暗い時間帯や夕暮れ時、ライトを点けずに走行する自転車は、車のドライバーにとって視認しづらく、思わぬ危険をもたらします。暗がりから急に自転車が現れ、ドキッとした経験がある方も多いでしょう。

ここでは、夜間における車と自転車の事故の過失割合を、具体例を通じて解説します。

一時停止を無視した無灯火の自転車と直進車の事故

夜間、一時停止の標識がある交差点で、一時停止を無視して直進した無灯火の自転車と、交差点を直進していたライト点灯中の車が衝突したケースです。

過失割合

A(直進車):B(無灯火の自転車)=45%:55%

解説

常、このような交差点での事故の過失割合は、A(直進の車)60%:B(自転車)40%となります。しかし今回のケースでは、夜間で自転車がライトを点けていなかったことが重視され、B(無灯火の自転車)の過失が15%加算され、最終的な過失割合が45%:55%となります。

  • 無灯火での走行違反:夜間の自転車のライト点灯は義務であり、無灯火の自転車は視認性が低くなり、5%の過失加算。
  • 著しい過失:無灯火のために重大な危険を生じたとみなされ、さらに10%の加算。

また、A(直進の車)のドライバーに前方不注意や速度超過があった場合、さらにA側の過失が上乗せされることもあります。また、自転車が児童や高齢者であれば、A側の責任が重くなるケースもあります。

「かもしれない運転」の重要性

このような事故は、一時停止を守れば回避できた可能性が高いものです。しかし、自転車は一時停止を怠る場合が多いため、ドライバー側も「自転車が飛び出してくるかもしれない」と予測し、減速や徐行を心がけることが事故防止に繋がります。

特に住宅街では小さな子どもや高齢者が自転車で飛び出してくることも考えられるため、見通しの悪い交差点では一時停止や徐行をしっかり行い、安全確認を徹底しましょう。

駐車場から道路に出ようとした車と自転車との衝突事故

日本では健康志向やさまざまな利用目的から自転車の保有台数が増加しています。その一方で、自転車と自動車の衝突事故も増えており、ここではその過失割合について事例を挙げて解説します。

【例】駐車場から左折して道路に出ようとした車と直進する自転車との事故

駐車場から左折で道路に出ようとした車が、直進中の自転車と衝突したケースです。

過失割合

A(自転車):B(駐車場から出てきた車)=10:90

解説

このケースでは、道路に進入する車には他の交通の流れを妨げないような注意義務が課されています。駐車場など道路外から進入する際は、特に車の側が責任を持って注意を払う必要があるため、車側の過失が大きく、90%と判断されます。一方、自転車側には、前方不注意の軽微な責任があり、10%の過失が発生します。

さらに、車が道路に頭を少し出して待機し、発進時に衝突した場合は、自転車側の過失が加算されることもあります。一方で、車側が徐行を怠って道路に進入した場合や、自転車の運転者が小さな子どもや高齢者だった場合は、車側の過失がさらに上乗せされる可能性もあります。

安全な運転のために

自転車は道路交通法上「軽車両」に分類され、基本的に車道を走行するものとされています。しかし、自転車と自動車では速度も大きさも異なり、特に自転車の運転者はむき出しの状態であるため、衝突すると大きな被害が及びがちです。事故を防ぐため、ドライバーは「自転車が突然出てくるかもしれない」と考えながら運転することが大切です。

また、自転車に乗る際も交通ルールを守り、安全運転を心がけてサイクリングを楽しみましょう。

まとめ

こうした過失割合はあくまで一般的な目安であり、事故の状況や道路環境によっても変動します。そのため、各ケースは一例にすぎないことを理解し、個別の事例に応じた判断が必要です。

また、自転車運転者にとって、自転車保険に加入することは非常に重要です。

特に一方通行逆走や信号無視など、道路交通法違反による事故が発生した場合、自転車側にも大きな過失が認められることがあり、場合によっては多額の賠償が発生する可能性があります。

自転車保険はこうしたリスクに備え、自分や相手の被害に対して金銭的な補償を受ける手段となるため、安心して自転車を利用するためにも、万が一の備えとして加入を検討することが大切です。